「怒らない」裏に隠された一面とは

戯言

人間はさまざまな感情が沸きあがるものですが、あたし個人の感情を紐解くと、喜怒哀楽のうちの「怒」の感情が(平均的な人と比べて)極めて少ない気がします。

もともと怒りっぽいほうではないし、他人が怒りのエネルギーを発している場に居るのもイヤなら、巻き込まれるのはとてもじゃないが耐えられません。まー巻き込まれるのは誰だって迷惑ですよね。

他人の怒りを見るのも不快なら、当然自身が怒るような目に遭うのも不快なわけで。
そんな心理が性格に影響しているのか、はたまた怒りスイッチ(ホルモンでいうところのノルアドレナリン)が人より欠落しているのか、これまでの人生で怒りが爆発したことは、おそらく10回もありません。
むしろ、内心たいして腹が立っていないが「ここは『怒ってます』という態度を見せておかないと、後々不利になるかもしれない」と「怒っているフリ」をすることはあれど、いわゆる「ハラワタが煮えくり返る」ような心情になったことは、皆無に等しいほど。記憶をさかのぼっても、2つくらいしか思い出せません。

そんな性格が災いしているのか、あたしは他人にナメられた扱いをされる場面が多々あります。たいして親しくもないのに辛辣なことを言われたり、客観的に見て「そりゃ言い過ぎだろ」と思うようなことを言われたことは5億回くらいあるんじゃないでしょうか。

別にいいんです。むやみに怖がられて皆から遠巻きに見られるよりは、ナメられても親しまれるくらいのほうが自分的には嬉しいし。
だけど時折カチンとくることはあります。「なんだかなぁ」とため息が出てしまうこともあったりします。

「カチン」とくるのは親しくないから

率直に「テメェにそんなこと言われる筋合いねーよ」と言ってしまえば、こっちのモヤモヤは晴れるのかもしれません。しかしおそらく「言いそうにない」あたしがそれを発したら、あまりに意外過ぎて、相手は言葉以上に重く受け止め、その後は気まずくなるかもしれません。一気にドン引きして、距離を置かれるかもしれません。(あたしに失礼なことを)邪気なく発した相手なら「その程度で怒るなんて」と逆に怒りを買い、disられるかもしれません。
臆病者ではないから「嫌われるのが怖い」という躊躇はないのですが、その相手と今後も仲良くしたいのであれば、やはり些末なことで諍いを起こす必要もないなと思うのです。

怒りを押し殺しているわけではないから「怒れない」のとは違うんです。
「怒り慣れていない」というスキル不足により、ますます怒りに対する判断が鈍くなるという悪循環に陥っているのです。
たとえばカチンとくるようなことを言われたとして、
「ここは怒っていいものか?」
と脳内で考えるうち、さっき沸いたはずの「カチン」な感情は、表現するまでもなくどこかへ吹っ飛んでしまいます。カチンがなくなってしまえば、怒りようがありません。

しかし、不完全燃焼となった一瞬の「カチン」は、「モヤモヤ」という感情に変化して、あたしの心には残ります。
それが度重なると「なんだかなぁ」というトホホな気持ちが芽生えます。それぞれは別の場面であっても、たまたま同時期に似たような場面が重なれば、ぷち凹くらいな気持ちに育ってしまうこともあります。
(幸いにして、飽きっぽいため落ち込みも持続できず、立ち直りは早いのですがw)

自分では、この怒らない性格を欠点だとは思っていないのですが、平和主義とは違うような気がします。
他人と無用に衝突しない振る舞いの裏には「この人に言ってもしょうがない」という、諦めに似た感情もあるからです。

実際、あたしがカチンとするようなことを言う相手は、こちらから見たら「まだ友達といえるほど親しくない」場合がほとんど。同じ言葉を親しい友人から言われたのであれば、かけらもムカつかないし、カチンときたら「ひどーい!」と率直に言い返すこともできるんですよ。

カチンの正体は「なんで親しくもないのに、そこまで言われなきゃならないんだ」という理不尽です。
仲違いしたくない相手には、上でも述べたように「カドが立たない」よう言い返さないという処世術を発揮することもありますが、嫌われてもかまわない相手にあえて言わないのは、その失礼な言動を指摘するほどの愛情もないからなんですよね。
つまり、裏返せば冷酷なんです。

溜めてないならいいじゃない

本当に優しい人ならば誰にでも優しいでしょうが、あたしはどちらかといえば冷たい人間です。「親しい人には溢れんばかりの愛情を振りまくが、どうでもいい人には冷たい」という優しくない性質が、実は「怒らない」という振る舞いの正体だったわけです。

「怒らない人のほうが怖い」といわれますが、あれは「怒りをため込むタイプは、後で爆発するから怖い」の意ですよね。
あたしはそれとも違います。蓄積以前に怒りが物質化(態度に出る)すらしない。不発弾みたいに腹の底に溜めるとか、怖すぎですよ!w

もしかしたら、そんな怒りの欠落が周囲を助長し、ますます「ナメられキャラ」化するのかもしれませんね。だとしても、もはやそんな自分すら諦観しているので、今更「いざというときはちゃんと怒る!」のも難しいような気がします。

せめて、自分以外の人から無用に怒りを買わないように生きたいものです。
(むしろそっちのほうが難しいのですが……)

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