月末進行と気分転換と健忘症

戯言

6月28日。月末カウントダウンの今日は、当然ながら締切前の原稿を抱えて半泣きの状態だ。
しかし原稿が行き詰ってしまったので、ブログへ逃避(笑)

まったく別のことに切り替えないのは、近いものを選んだほうがラクだから。
ここで料理やら家事に逃避してしまうと、アタマが執筆モードに戻ってくるまで時間がかかってしまう。
現実逃避というより気分転換。国語の勉強に飽きたら数学の勉強をするようなものだ。
まーそもそも勉強はキライだったから、試験前くらいしかそんな技を発揮したことはないが。

月末進行は、夏休みの宿題に似ている。学生時代あんなにイヤだった「魔の8月31日」が毎月襲ってくるのは相当なストレスだと思うだろうが、あたしにとって「書くこと」は、勉強ではなく遊びや趣味の延長に近いので、別段苦にはならない。

好きなことをやっているのだとしたら、なぜ半泣きなのか。
それはひとえに「伝えたい内容を的確に表す言葉が出てこない」から。
要は、脳がうまいこと働いてくれないのだ。

頭のよくないあたしは、どうやら記憶の引き出しが整理されていないらしく、海馬が壊死してるんじゃないかと思うくらい忘れっぽい。動きの悪いシナプスは、錆びついているに違いない。一日に50回くらいは「アレって何だっけ?」という現象にブチ当たり、思考が止まってしまう。
人の名前などの固有名詞が出てこないのは、もはや記憶障害レベル。これは、中年になり脳の老化がはじまったせいなのだろうか。

そういえば子供の頃、大人たちの会話はアレだのコレだの代名詞ばかりで、何のことを言ってるのかサッパリかわからなかった。
「アレって何?」とたずねても「アレはアレよ」などとワケのわからない回答をされるので、大人に囲まれた生活をしていても、あたしの頭が賢くなることはなかった。

今ならその気持ちがよくわかる。
中年以降の会話に代名詞が増えるのは、脳に蓄積され過ぎた情報がカオスとなっているからだ。
的確な検索機能を脳のシステムに構築しなければ、ボキャブラリーは失われるばかり。作家としては致命傷なので、どうにか対策を図らねばならない。

しかし昨今はインターネット時代。いくら喉元まで出かかって詰まろうと、かけらでもヒントが浮かんでさえいれば、あとはGoogle先生に頼ることで「そうそう!コレなのよ!」にたどり着けることも多い。
たとえば「あのドラマに出てた、ほらあの人!」を知りたければ、ドラマ名で検索すれば、瞬時にキャストページが出てくる。
肝心の検索キーワードが思いつかなければお手上げだが、連想ゲームは得意なので、その点では困っていない。

出先でも、Google先生の世話になることは多々ある。記憶だけでなく方向感覚までもが怪しいあたしは、道に迷えばGoogleMapを頼り、言葉に詰まれば検索番長と化する。
しかし、スマホに依存しすぎるのは危険だ。
天候が怪しくGPSが狂えば都会の真ん中で迷子になるし、スマホが電池切れで死亡すれば知性までも失われる。

もはやスマホがなければ、あたしは人間以下だ。ただの野生動物となってしまったときは、太陽の向きと他の人間と帰巣本能だけを頼りに、1秒でも早く帰ろうとする。あるいは家電量販店へダッシュし、1時間100円で充電してもらう。その間、迷子にならない距離に喫茶店が入れば休むのだが、スマホがないと手持ち無沙汰となり、生きた屍のような状態になってしまう。
(そんなことにならないよう、外出時には必ず充電用バッテリーも携帯するが)

閑話休題。
「書きたいのに書けない=うまい言葉が出てこない」状態に行き詰まると、あたしは気分転換にSNSへの投稿やブログ更新へと走る。
そこでも言葉が行き詰まったときは、いよいよ料理や掃除へと現実逃避する。

別のことを書く作業に切り替えるのは、ポンコツな脳をなんとかして動かすためだ。
アウトプットしたいネタを抱えすぎるのも、脳の記憶領域にとっては邪魔となる。ネタ帳であるEVERNOTEに書き込む時間を考えたら、さっさとブログに吐き出してしまったほうがいい。それだけで脳の一部は解放されるし、タスクがひとつでも減れば、ストレスを溜めなくて済む。

実はここまで書く間に、あたしはキッチンへ立った。そう、ブログでも行き詰ってしまったあげくの現実逃避だ。
今ガスレンジの上にある寸胴鍋は、野菜室で「早く食べてー」と悲鳴をあげていた大根やら人参やらキャベツと、冷凍庫にストックしてある鶏胸肉を解凍したものがブチ込まれ、グツグツとスープを煮込んでいる。

毎月、そんな感じで月末進行を乗り切っている。
そんな生活を、十年以上もやってきた。

いいかげん「夏休みの宿題」な日々から自分を解放しよう。
来月からは月初にサクサク原稿を終わらせ、新しい仕事に着手したりレジャーを楽しんだりしよう。
いつまでも学生時代の習慣を引きずるなんて、成長がない。

レベル48にして改心するのは遅すぎる気もするが、思い立ったが吉日だ。
まだまだ人生は長い。作家業に定年はないのだから、書き続けるためにも生活を改めなくては。

寸胴鍋から美味しそうな湯気が出ている。
現実逃避という名のスープを飲み込み、少しでもアタマを回転させて、原稿を仕上げよう。

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