誰にでも優しい男は好きじゃない

戯言

彼氏にするなら「優しい男がいい」とほとんどの女性は言う。
そりゃあ冷酷な男より優しい男のほうがいいに決まってる。
だけど男に求める「優しさ」って、一体なんだろう?

あたしは、あまり優しすぎる男は好きじゃない。正確には「信用できない」胡散臭さを感じてしまう。
どこまでが心から発しているものなのか、ホントは全部「営業」なのではないか、あるいは「嫌われるのを必要以上に恐れている」軟弱な男なのかもしれないと、警戒してしまう。

あたしが特に苦手な優しい男は、いわゆる博愛主義者だ。

昔そういう男と一度だけつき合ったことがある。
誰にでも優しい人は皆に好かれる。社内でもモテていた彼にアプローチされたときは、ちょっと誇らしい気分になった。
だけどしばらくつき合ううちに、だんだんと違和感が芽生えた。

あたしはどちらかといえば、冷たい女だ。
自分の好きな人には優しくするが、どうでもいい人には特に優しさを向けることなく、無難な対応しかしない。
また、たとえ親しい友人でも、必要以上に依存されたり、日常的につるみたがるほど距離を詰められると、途端に冷たく振る舞ってしまう。
「ひとりじゃ何もできない」系や「何でも共有したがる」系の人は、昔から苦手なのだ。そういうつき合いが唯一許せるのは、恋人(パートナー)だけ。なんでただの友達と、そこまでベタベタしなきゃいけないの(笑)

閑話休題。

前述の博愛主義者の彼は、そばで見ていても驚くほど皆に優しかった。溢れる愛情を注ぎまくって、よく消耗しないものだと感心した。
「誰かの喜ぶ顔を見ることが俺の幸せ」だと彼は言った。そこまで他人に優しくなれないあたしは、純粋に彼をリスペクトした。

だけど次第に軋轢は訪れた。
誰にでも優しい彼は、ある意味公平だった。つまりそれは、彼女さえ同列に扱うということだ。
恋人なのに特別扱いされないこと、デートの最中でもヘルプの電話がかかってくれば、そっちへ行ってしまうこと。
それは近しい人間だからこそ、抱いてしまう不満だろう。
別れの瞬間まで、彼は変わらなかった。逆に、そんな場面でも一定の優しさを発揮するから「このまま別れていいのか」困惑させられた。

+ + +

うわべだけの優しさでごまかされるほど、あたしも子供じゃない。
そりゃ階段で手を差し伸べたり車のドアを開けてくれるようなエスコートも、しないよりはしてもらったほうが嬉しいが、そんなのは優しさの範疇には入らない(ただのレディファーストだ)。

女が男に求めるのは、本当に困ったときに助けてくれる、スーパーマンみたいな優しさだ。「俺がついてるから大丈夫」と守ってくれるような優しさだ。
それはたぶん、弱い男にはできない種類のものだろう。

強い男の優しさは、慈愛に満ちている。性格的なものもあると思うが、その強さや愛情やエネルギーが溢れるほど、博愛になりやすい傾向がある。
(逆に弱すぎて「誰からも嫌われたくない」博愛主義者もいるが、そっちのタイプには惚れないので自分とは縁がない・笑)

強い男は好きだけど、博愛になるくらいなら、あたしは弱い男のほうがいい(あたしより相対的に弱いのはNGだが)。
世間から「冷たい男」だと嫌われても、あたしに世界一優しくしてくれれば充分(笑)

一見冷たく見えるような男でも「心を許した人」「自分が好きな人」にだけは優しいもの。あたしも似たタイプだが、一部の人間にしか優しくない人は、傍目に見ると冷たそうな印象だったりする。
そういう相手の懐に入り優しくされると、わかりやすく特別感が得られる。
「特別」に贔屓する行為(好意でもある)に、あたしはその愛情の大きさを量ってしまう。

皆に優しいのは、誰にも優しくないのと同じ。
「誰にでも優しい」男じゃイヤなんだ。あたしに「特別優しい」男が好きなんだ。

タイトルとURLをコピーしました